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ドリプラX 世田谷区東玉川小学校様の声

東京ベーシック・ドリルの学習対応アプリ「ドリプラX」。その発起人である世田谷区立東玉川小学校・新村元校長に、構想から導入までの経緯を伺いました。

icon-microphone お話:世田谷区立東玉川小学校 新村出(いづる)校長 ※取材時/主任教諭 荒川信行先生
icon-pencil インタビュー:株式会社エスアイイー

東京ベーシック・ドリルとは、小学校1年生から4年生までの国語・算数・社会・理科の基礎的な学習内容及び知識を身に付けるためのドリル。東京都教育委員会が配布しています。
そのドリル学習専用プラットフォーム・ソフトウェア ドリプラXを、エスアイイーが開発しました。(開発元:株式会社エスアイイー 協力:インテル株式会社)
近々、高学年や中学生分も配布される予定とのこと。
icon-pencil ドリプラXの構想を思いついたきっかけを教えてください。

ドリプラX 世田谷区東玉川小学校様の声

新村校長東京ベーシック・ドリルを授業で運用していくことを考えた時に、正直難しい面があることを感じていました。だって、授業の度に何十枚もプリントアウトしていくのは、どう考えても効率が悪いですから。
ではどうすればいいかと考えた時に、こういうことは人間よりもマシンのほうが優れているですよね。つまり印刷ではなく、データベースを駆使してドリルを扱おうと考えたわけです。
紙からデジタルデータに置き代えることで、印刷の手間やコストを削減でき、そのぶんを子供たちと向き合う時間にまわすことができるのではないかと。

icon-pencil 御校ではさっそく授業に取り入れ、徐々に成果も見え始めているというこのドリプラX。現バージョンでは意図的に機能を絞っていると聞きましたが。
新村校長まだ生徒一人に一台端末を配布できる状況ではないという事情もありますが、あまりに完成されたマシンだと、逆に自学自習の機会を奪ってしまうのではないかという考えもありました。たとえば、「1から3の中で正解を選びなさい」というUIだと、「1番、ピンポン正解」、「2番、ブッブー間違い」という、生徒と端末のまさしく機械的なやりとりしか生まれません。

ドリプラX 世田谷区東玉川小学校様の声

そうではなく、間違えたところは何が違っていたのかを自分で検証できる。それでも分からないところは先生に聞く。友達にも相談してみる。そうやって人と人とのコミュニケーションの中から学びを得るということが、学校側としては一番教えていきたいところなので、むしろ人の介在する余地を残したアプリケーションのほうが都合がよかったんです。

icon-pencil 学ぶ楽しみも得られるツールであることが、子供たちを自学自習に向わせるのに必要だと考えたわけですね。
新村校長今までのドリルでは、子供たちは自分が何に躓いたのかを理解できずに次のページに進んでしまうことが多々ありました。掛け算ができない子に、割り算はできないですよね。でもみんなが割り算をやっているのに、一人だけ掛け算のプリントで復習していると、その子自身もあせりを感じてしまうことがあります。ところがこのドリプラXの場合だと、いちいち画面をのぞきこまない限りは、どのページをやっているのか隣の子からは見えない。だから子供たちは安心して、以前の問題に立ち返ることができるんです。
人間だれしも、いろんな凸凹がありますから。その凹を補う努力をしている子を、笑わない子に育ってもらいたい。そんな環境が、このドリプラXによって生まれたらいいなという期待感もあります。

ドリプラX 世田谷区東玉川小学校様の声

荒川主任凹を補う努力を笑わない風土というのは、ドリプラXを使った授業の中で既に生まれつつありますね。
私は算数の授業を受け持っているのですが、進みの早い子がいれば、中には遅い子もいます。すると、先に進んだ生徒が、躓いている生徒を自発的に教えてくれるんですよ。その子は人に教えることで、自身の理解をさらに深めることができるでしょう。教えられた子も、よりしっかりと学ぶことができます。教育現場としては理想的な形が、ドリプラXを用いたことで見られるようになってきています。

新村校長計算力の高い子が、図形や空間認知が得意かというと、そうとは限りません。だから、凸の時に得意げになる必要もないし、凹の時に卑屈になる必要もないんですよ。そのことを子供のうちに学べるというのは、学力向上と同じくらい大きな意味があると思うんですよね。

icon-pencil タブレットを使った学習という目新しさも、子供たちをひきつける要因になっているのでしょうか?
新村校長いや、それだけでは逆に危険です。新しいものの刺激性というのはありますが、それだけではすぐに飽きてしまう。おいしい料理でも毎日同じものを食べていたら飽きてしまいますよね。
要は、このドリプラXを通じて子供たちが、「自分で選択して学ぶ楽しさ」を体験できなきゃ駄目なんです。その点は、子供たちの反応はとても素直ですよ。たとえばある子は、タブレットに分度器を当てて角度を測っていました。最近のデジタル教科書なんかだと、分度器ツールがもともとついている場合が多い。でもドリプラXはそういった機能をあえて充実させていないぶん、子供たちは自分で工夫しながら学んでいくしかないんです。

ドリプラX 世田谷区東玉川小学校様の声

荒川主任学びって、自分が構築していけないと楽しくないんですよね。自分で試せる、やってみる、その結果を自分で検証できる。これは、子供たちの自学自習にすごく大事なことだと思っています。
自分で答え合わせをして、×だったところは何が間違っていたのかを自分で検証したり、友達や先生に聞いてみたりすることができる。そういう学びの循環を生み出せているところが、このドリプラXのすごくいいところだと思っています。

icon-pencil こうした新しいツールを導入するということに対して、先生方の反応はいかがでしたか?
新村校長うちの学校の先生たちは、新しいものを拒まない人が多いんです。先生方も、自分たちの授業だとか子供たちへの接し方を、改善していくことが大切だと思ってるんですよ。
まず、今までの教育の常識が通用しなくなってきている面があります。たとえば、子供はおとなしく座って授業を受けるもんだというのが常識だと思うじゃないですか。今はそれすら怪しいです。まあこれは極端な例ですが、10年、20年常識だとされてきたことに捉われすぎている先生は、上手くいかないこともあるのではないかと思います。そういう教育現場の背景もあって、うちの先生方は新しいものに貪欲なんですよ。とりあえず試してみたいという。

荒川主任先生は、魅力ある授業がしたいんです。子供たちの心をひきつけるためにはどうすればいいのか、教育の現場サイドは常に腐心しているんです。

icon-pencil 現状で感じている、ドリプラXの課題はありますか?
新村校長今のバージョンはブラッシュアップはまだ必要ですが、機能的にはこれで完結していると思っています。ただし次の世代、このドリプラXが一人に一台ずつ配布されるようになった場合には、ひょっとすると手書き認証とか自動集計などの機能が必要になるかもしれませんね。無論、機械に何をさせるかを決めるのは人間であるべきという考えは変わりませんが。
あと、これから実験してみようと思っていることなんですが、動画を教材に取り入れてみようかと。たとえば体育の授業で、台上前転を教えるとします。先生方の中には体育が苦手な方もいますので、そこを動画と解説が補ってくれるようにできるといいんじゃないかなと。
これをさらに進めると、見知らぬ上手な人の動画ではなく、校内の体育が得意な子の動画にしてみたらどうだろうと思うんですね。そのほうが子供たちにとっても身近に感じられて嬉しいじゃないですか。

icon-pencil 教材自体を、自分たちでアップデートしていきたいということですか。
新村校長ええ。ただしそれには課題もありまして。それは先生側の意識改革です。教材を自分たちでアップデートできるようになった場合、それを積極的にやる先生と、やらない先生が出てくるでしょう。結果、指導の質に差がでてきます。いいものはどんどん取り入れる。逆に、自分のやり方も積極的にシェアしていく。先生方には今後、こうした育成方針も必要ではないかと考えています。
いずれは、先生どうしがいい教材や指導方針を交換し合えるコミュニティーのようなものが発達していくといいですよね。

荒川主任大事なのは、子供の勉強するニーズを理解することなんだと思います。子供はやっぱりできるようになりたいと思っているし、友達と関わって勉強したり遊びたいと思っているし、そういう子供のニーズに応えていくという側面が、ドリプラXにもあるのではないかと思います。

ドリプラX 世田谷区東玉川小学校様の声

新村校長子供たちは結局、機械から称賛されるよりは、仲間や先生から称賛されたいんです。そういう気持ちに応えられるようにバージョンアップしていくことが、子供たちの自学自習には一番重要なんだと思いますね。

ありがとうございました。

取材・撮影:株式会社エスアイイー

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